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| 佐々木常務理事はKリーグへのアドバイスも語ってくれた |
――さて、現在、ヴィッセル神戸のキム・ナミル選手の場合を除いて、日本に進出する韓国の選手たちは若い選手たちがほとんどです。しかし日本に行った韓国人選手たちはJ1ではなく、J2でプレーする選手が多いのが現状です。日本では韓国の選手に対してあまり魅力を感じていないのでしょうか? 韓国の保守的な人は日本でプレーすることを否定的に捉えている面もあります。 「魅力がないことはありません。十分、魅力はあると思いますよ。キム・ナミル選手なんか見ていたら素晴らしいプレーヤーですね。パク・チソン選手もJリーグにいましたが、今ではマンチェスター・ユナイテッドでプレーしていますからね。韓国の否定的な見方に関しては、もし私が逆の立場だったら韓国の人々と同じことを思っているかも知れません(笑)。でも、それでは選手が成長しません。韓国の選手を国内に留めさせるには、まずは日本に行く要因が一体なんのかをしっかり分析することが必要です。踏み留めさせることをしっかり考えないといけません。日本に行く選手が増えて、ただ『悔しい』で終わってはいけないし、Kリーグがもっと魅力あるリーグになることを考える必要があると思いますね。もし逆に日本の選手がどんどん韓国に行ってしまうと、逆のインタビューを受けるかもしれないですけど(笑)。私はKリーグでもJリーグであっても、『誰にとって良いリーグにしていくのか』を考えることがもっとも重要だと思うんです。もちろんファンやスポンサーのためのリーグでもあるのですが、我々にとって一番重要なことは『選手にとってどれだけいい環境を作ってあげられるか』ということだと思っています。それは日本でも韓国でも同じではないでしょうか。そうなることでアジアからいい選手が多く出ていくし、アジアのサッカーが強くなりますからね。互いに研究しあって、プレーヤーにとっていい環境をどのように作っていくのかを常に考えていきたいですね。これらの環境作りが、ある時期は日本、ある時期は韓国であってもいいんです。そうやって環境を整えることによっていい選手がどんどん生まれるわけですから」
――最近はファン・ソンホン(釜山アイパーク監督)やコ・ジョンウン(城南一和ジュニアユースコーチ)、ハ・ソッチュ(慶南FCコーチ)、チェ・ヨンス(FCソウルコーチ)などJリーグでプレーした選手たちが指導者になっています。彼らはJリーグから受けた影響も多かったようです。 「ホン・ミョンボやコ・ジョウンにしても、日本で学んだものを韓国で生かしていると聞いています。やっぱり日本のいいところを生かしてもらえればいいし、そこからいい選手が育てばもっとリーグが活性化しますからね。私も当初は韓国で色々学びましたから。施設やリーグの形態、あとは勝負にこだわる精神力もそうです。そういうのを日本の選手に植え付ければ、またステップアップできます。互いに学ぶべきものはまだまだたくさんあると思いますね」
――Kリーグではリーグ戦に力を注ぐあまり、カップ戦の品位というか関心と重要度が落ちてきているのですが、ファンにとってもリーグ戦に集中できなくなるカップ戦には不満が多いです。日本ではナビスコカップをどのように運営しているのでしょうか? 「日本も同じで、うまくいっていない部分があります。集客のことを考えると、週末の土日のほうが見に来てくれるファンは多いですからね。そういった中でカップ戦を土日にやろうとなると、リーグ戦のほうが価値は高いし集客も期待できるということで、リーグ戦は土日、カップ戦は平日の水曜日にやっていくしかない。そうなると確かにファンの足が遠のき始めました。スケジュールをリーグとカップ戦のどちらを優先していくのかという問題もありますし、そこに代表戦がバッティングすることもあります。日本の場合はJ1が18チームあって、リーグ戦とカップ戦の日程を調整するのが非常に難しい。そういう状況のなかで、代表戦がアウェーであった場合は主力選手がチームから抜けるわけですから、それが原因で集客も減ったりします。だからといって、我々もじっとしているわけにもいきません。そこで『ナビスコカップ』は“若手の登竜門”と位置づけて、毎年『ニューヒーロー賞』を設けています。これは23歳以下の選手に与えられる賞で、大会を取材した報道関係者の投票によって選出されます。たとえ、ナビスコカップに人気がある代表選手がいなくても、ここで活躍した選手がいずれ代表でプレーするという期待を持っていただけるようにと工夫して大会を盛り上げています。実際にこの賞を受賞した選手のほとんどが代表入りを果たしています。このようにカップ戦も工夫することで違う見え方が出てきますし、ファンも楽しめると思いますね」
――現在、Kリーグのクラブの悩みは、選手の年俸が高額で運営が大変なのですが、最近はJリーグの選手たちの年俸の金額に落ち着きが見られるのですが、何がきっかけになったのですか? 「日本の場合はいつも比較されるのが野球です。野球は高額な年俸を選手たちに支払っていますよね。Jリーグの場合、クラブの負担が大きくてチーム運営を長く続けていくことはそう簡単なものではありません。日本のプロ野球の場合は企業がバックにあるので、ある程度多く支払えるのはあります。子供たちは野球選手は数億円もらっていて、サッカー選手はそれよりも数段少ないことも知っていますから、“憧れ”の部分においてはサッカー界に多少の厳しさがあるのも事実です。しかしながら、夢を追うような形だけでクラブを作ってしまうと最終的には破綻してしまいます。Jリーグが発足(1993年)してから5、6年経ったあと『自分たちがプロとして稼げる範囲の中で、いかに選手たちに給料を払っていけるかという部分を考えていこう』というチームが増えましたね。そこから年俸の見直しをスタートして、身の丈に合った経営をやっていこうと話し始めたわけです。選手たちもそれを理解してくれていると思っています。収入さえ増えれば、もっと選手の年俸は上げたいと考えてはいます」
――Jリーグはアジアを代表するリーグに成長しているのですが、これからもっと大きなリーグにするため、どのような計画を立てていますか? 「日本、韓国、中国の東アジアの3ヶ国が中心になって、どんどんレベルの高い試合をしていかなくてはならないと思います。そのためには今回のような交流の幅を広げて、サッカーの技術の向上や、リーグ全体が成長していくように努めることが大切ですね。とくに若手の交流からスタートしていくことが重要です。J、K、Cリーグの共同主催で昨年は中国でU−17の大会を開催したのですが、日本からは鹿島アントラーズと韓国の高校が参加して試合をしました。U−14の試合は昨年、新潟で行なわれたのですが、そういった国際交流を若いころから経験することはとても大事だと思います。いつもとは違うサッカーを体験できるわけですからね。そこでの経験を自分のチームに帰ったときに生かすことで、リーグが活性化していくと思います」
――Jリーグのユース育成システムについて、韓国のファンたちはとてもうらやましく思っています。韓国では徐々にユース育成システムを準備している段階なのですが、アドバイスすることがあれば教えてください。 「韓国は学校で選手を育てるシステムが伝統的に強化されていますよね? 学歴のなかでサッカーをやっていくというのを昔から聞いています。そういう歴史を持っているので、一気に変化させていくのは難しいでしょう。韓国は特定の高校や大学から優秀な選手が生まれていますが、いずれにせよ地道に努力していくしかないですよね。日本もJリーグを立ち上げたときはJクラブが下部組織を持つように義務づけられましたが、当初は地域とのあつれきなどもあったんです。元々は学校のクラブでサッカーをしていた子供たちが、Jのクラブチームに加入したりするケースが多かったですから。ただ、それでも地道にクラブと地域が意見交換や交流を重ねて理解を得て、今では地域が一緒になって、選手にとっていい環境、いい指導をしていこうという交流が生まれています」
――Jリーグの地域密着型のクラブ運営はとても魅力的に映ります。特に浦和レッズなどは韓国でもクラブ作りの模範になっています。各クラブの努力によって今のJリーグがあるのだと思いますが、やはりJリーグ本体の舵取りがとても重要だと思われます。各クラブにどのようなアプローチやサポートしているのでしょうか? 「まずは地域に根ざしたクラブ作りがJリーグの大きな理念なので、地域の人たちとともにクラブを育てて応援してもらい、その地域で選手を育成していくことを心がけています。“指導”というソフトを提供することにおいては、優秀な指導者はJのクラブにかならず在籍しているということを念頭に置き、そのノウハウを地域に還元することを常に強調しています。選手を集めて指導するのではなくて、その地域にいる多くの指導者とともに、優れた指導方法を研究していくことが大切ですからね。そうすることで、地域の指導者たちも、Jクラブの指導者たちも、様々な角度からの指導方法を学ぶことができます。指導者の知識が増えることはとてもいいことです。選手を集めても教えるには限界がありますよね。でも、指導者をたくさん集めて教えれば、そのパイは一気に増えますし、それによってもっといい選手を発掘できますからね」
――JリーグはKリーグよりも発足が遅かったのですが、どんどん急成長を遂げています。韓国ではさらにその上を行くのではないかというイメージがあるのですが、Jリーグが掲げる最終的な目標はなんでしょうか? 「Jクラブが今はJ1、J2合わせて33チームあるのですが、将来的には1県に2チーム誕生させられないかと考えています。47都道府県あるので、その倍の約100のJクラブを誕生させることが目標です。神奈川にはすでに4つあるのですが、まだクラブがない地域もたくさんありますから、そういう場所に1つでも2つでもクラブを作りたいと考えています。J1を目指すクラブだけではなく、Jリーグの理念、すなわち地域に根ざしたクラブをたくさん作っていきたいですね。あとは世界に進出できるクラブを誕生させることです。そのためにもアジアチャンピオンズリーグの位置づけを明確にして、そこでしっかり勝たなくてはいけませんね」
――ライバルと言われ続けた日本と韓国ですが、その一方でアジアのパートナーとして歩んでいかなければならない部分もあります。佐々木常務理事が思う日韓サッカー交流、これから期待するものは何でしょうか? 「まずはそれぞれの国の中で、リーグの存在価値を高めていかなければなりません。まずは足元をしっかり固めるということです。足元を固めることで、下部組織からの成長が期待できます。そして“高いレベル”での交流が大切ですね。Kリーグの関係者たちはチャンピオンズリーグみたいな形で交流できないかとよく言っていたのですが、アジアチャンピオンズリーグが改革されつつあるので、これからいい形での交流が活発になると思いますね。韓国は一番近くにいる良きライバルなので、その関係をいつまでも失いたくありません。“競争なくして成長なし”ですから」 (後編おわり)
取材・文=慎 武宏・金 明c
★次回は横浜FCのチョ・ヨンチョル選手が登場します。
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